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『人工股関節とは?』
変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの病気により、股関節の傷んだ関節部分を、人工の器械に入れ替える手術であります。この手術により、痛みが和らぎ、脚の長さや動きも改善し、安定した歩行を取り戻すことが手術の目的です。
この手術は、1960年頃にイギリスで始まり、日本には1970年頃に伝わりました。人工股関節手術に求められることは、長期耐用性であり、いつかしなければならない”やり直し”を避けることです。我々が踏襲しているセメントを用いた手術方法で、30年以上前に行われたセメント人工股関節置換術が30年間”やり直し”の手術を行なわずにすんだのが約50%、20年では約80%であったと報告されています。私が師事し指導をして頂いた飯田寛和先生が、関西医科大学で同様の手術方法で行ったセメント人工股関節置換術2500関節で、10年間”やり直し”の手術を行なわずにすんだのが96.4%であります。(2014.12.31現在)
当センターの手術法方法は、最小侵襲手術(MIS)、早期回復・社会復帰、最新・最先端インプラントなどは謳っておりません。最小侵襲手術(MIS)の定義には入りませんが、皮膚切開は約11-14cmで、筋肉や腱の横切りをしない、体に与える侵襲は最小侵襲手術(MIS)と同等であり、正確な位置に人工関節を設置することが確実にできる手術手技と考えております。入院期間は基本4週間としています。これは、センター長が関西医科大学枚方病院でした約500関節の患者様は20歳から93歳までおり、それぞれ全身状態や回復力が異なり、症状によっては転院リハビリなどが必要でした。そのため当センターでは、4週間をリハビリの基本期間として、2-8週間で患者様にあわせて変更するのが良いと考えて行っております。術後2ヶ月間は、制限を設けてリハビリや生活をしていただいておりますが、その後は和式トイレやしゃがみこみ、正座、胡座などはすべて許可しており、激しい運動はすすめていませんが、一般的な日常生活で禁忌肢位は設けていません。また、実際に最新・最先端のインプラントの中には、数年で発売中止となり、訴訟問題になっているものもあり、最新が最良とは限らないと考え、実績あるインプラントを用いてセメント人工股関節置換術を行っております。歴史的に良好なセメント人工股関節置換術の成績を、現代の技術と経験により、少しでも改善し、“やり直し”や合併症を減少させる努力をしていくことが重要と考えて行っております。
人工股関節置換術は、”手術すれば終わり”ではなく、”手術がお付き合いの始まり”であります。長期間の経過を診察させていただくことが必要であり、経過の中で“やり直し”が必要なことも出てきます。” やり直し”がないことを期待して、長期成績も出ている安全なセメント人工股関節置換術を行っておりますが、もし” やり直し“をする際は、どんな” やり直し“でも可能な人工股関節置換術を最初に行うことが重要であると考えております。その点でも、セメント人工股関節置換術が優れていると考え行っております。





① 細菌感染
頻度は1%以下と考えられていますが、人工股関節に細菌がついてしまい炎症を起こすことがあります。症状は創部の発熱や疼痛などで、手術直後だけでなく、術後何年たっても起こることがあります。手術では、感染予防のために、クリーンルームの使用、ヘルメットシステムの使用、抗生物質の適切な予防投与など行っております。水虫や歯槽膿漏、膀胱炎などの感染症が一因となるため、患者様も清潔に気をつける注意が重要です。もし感染した場合は、人工股関節の感染は、虫歯を根本的に治す薬がないように、薬では根本的には治癒しないため、”やり直し”の手術を必要とします。

②肺塞栓症(エコノミー症候群)
俗にエコノミー症候群と言われている病態です。股関節の手術だけではなく、他の手術や安静などによる血の流れの悪化で、下肢の静脈内の血液が固まり、動いた時に血液が固まってできた血栓が、肺の血管をつまらせてしまうというものです。最悪の場合は、即死する可能性もあります。日本人では欧米に比べて発生率は低いと言われていますが、弾力ストッキングの装着、フットポンプの使用、術後早期離床、抗凝固剤の使用(症例による) などを行い予防に努めております。

③脱臼
人工股関節が外れてしまうことで、症状的は激痛で動けなくなります。発生率は、関西医科大学で同様の手術方法で行ったセメント人工股関節置換術2500関節で約1.7%でありますが、難治症例を除き、一般的な変形性股関節症のみにすると脱臼率は約0.9%であります。原因は、不自然で無理な姿勢や骨折、以前の手術による股関節周囲組織の欠損であります。術後は、約2ヶ月間は、制限のある生活をしていただいていますが、それ以後は制限を設けず、しゃがみこみ、和式トイレ、胡座なども自由にしていただいております。スポーツでは、ハイキング、サイクリング、水泳、ゴルフなどは勧めていますが、柔道や空手、サッカー、スキー、スノーボードなど、選手同士がぶつかりあったり、激しい負荷のかかるスポーツは勧めてはいません。

④輸血のリスク
現在の平均的な術中出血量は200-400mlのため、強い貧血のある患者様や両側同日に人工股関節置換術をする例などを除いて、術中自己血回収血装置を使用することで、輸血が必要になることは、ほとんどありません。ただし、ごくまれですが、股関節近傍の血管を痛めてしまった場合は出血が増え、輸血が必要な場合があります。

⑥神経麻痺
股関節周囲には、大腿神経や坐骨神経などの神経が存在します。神経を直接切断したりすることはありませんが、人工股関節置換術の術中には脱臼している無理な肢位をとっているため、極めてまれですが、一時的に下肢の強いしびれや膝や足首の運動麻痺は起こることがあります。

⑦再手術・長期間FUの必要性
人工股関節のインプラントは、材料や技術の進歩で、これからの耐用年数は長くなると考えられます。しかし、人工股関節が”やり直し”をしなくていけない理由は、土台となる人間の骨の強さや活動量にも影響されるため、正確な予想は困難です。もし人工股関節がゆるんだり、摩耗を起こしてきた時は、患者様の自覚症状よりもレントゲンでわかることが早い場合が多いので、どんなに調子が良くても、1年に1度の定期検診を続けていただくことが大切です。初回手術の時期は、患者様によってある程度決めていただきますが、”やり直し”の治療時期は、定期的なレントゲン撮影と診察により、医師に決めさせていただいております。

⑧脚長差
手術前は、下肢の長さが短いことが多いので、2-3cm程度までは症例に応じて長くすることができるので、できるだけ左右の長さが合うようにします。しかし、下肢を短くすることはできないのでご了承ください。また、手術早期は、歯のインプラント治療の後や新しい靴を履いた時のように、”慣れ親しんだ”術前の状態と異なるため、同じ長さになっても、“長すぎる!”感覚に陥りますが、時間経過とリハビリなどで徐々に”馴染み”違和感は改善します。