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麻酔を受けられる患者様の為に

1.麻酔の種類

 麻酔には全身麻酔と硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔等がありますが、全身麻酔単独で行うときと、両者を併用するときがあります。また、手術中の全身状態に応じて麻酔法を変更することもあります。患者さんごとに、担当の麻酔科医が主治医と相談しながら最も適切と考えられる麻酔法を選択します。




 一般に、腹や胸、脊椎、肩や腕、顔面や口腔内、脳の手術では全身麻酔を用います。  また、へそから下の手術(婦人科疾患、虫垂炎、痔、ヘルニア(脱腸)、下肢の骨折等)には、脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔を単独で用いることもありますが、最近では全身麻酔で行う場合も多いです。

小児の麻酔

小児(16 歳未満)では小さなけがの手術を除いて、通常、全身麻酔を行います。見慣れない手術室での不安が大きいため、眠っている状態の全身麻酔の方が安全だからです。

2.麻酔科の術前(麻酔前)診察

術前診察は、麻酔科医が手術前の患者さんの状態を把握し、麻酔法や鎮痛法を選択するときに必要な情報を得るために行います。




《診察でよく伺う質問事項》

•心臓や肝臓、腎臓、肺、脳などの重要な臓器に持病があるかどうか
•現在常用している薬があるかどうか(血圧を下げる薬、糖尿病の薬、血が固まりにくくなる薬、ステロイドなど)
•喘息の病歴があるかどうか
•鼻血や出血が止まりにくいかどうか
•アレルギー体質や特異体質があるかどうか
•最近、予防注射を受けたかどうか
•患者さんご自身やご家族に悪性高熱症の疑いがあるかどうか
•グラグラしている歯や弱い歯があるかどうか。または義歯をつけているかどうか
•首を曲げると肩や腕に痛みやしびれを感じるかどうか
•顎を大きく開けることができるかどうか
•会話や耳が不自由かどうか
•最近、目の手術(白内障や緑内障)を受けたかどうか
•妊娠しているかどうか

《麻酔科診察》

必要に応じて、手術前の血液検査やX線写真の結果を説明した後に、聴診や打診、触診を行います。また、口や喉の奥を診たり、脊椎や関節の診察をさせていただくこともあります。ご高齢の患者様の場合、心臓の超音波検査(心エコー)をさせていただき、心臓機能をチェックさせて頂く事が多くあります。肺機能の検査もさせて頂く場合もあります。

3.麻酔方法の説明

患者さんの全身状態や病歴、手術内容などを考え合わせて、麻酔方法を手術医と麻酔科医が選択し、患者さんやご家族に説明します。

4.麻酔前指示

安全な麻酔のために大切なことなので、必ず指示を守るようにして下さい。

《絶食・絶水》



胃の中に食べ物や水分が残っていると、麻酔中に吐いてしまって、気管の中に入ることがあります。このようなとき、重い肺炎を起こしてしまうことがあります。麻酔を開始する前の一定時間は、食べたり、飲んだりしないように指示がありますので、必ず指示を守るようにして下さい。



《たばこ》



喫煙者の方は、手術の後に咳や痰が多くなります。そのため、肺炎を起こしやすくなり、咳も出やすくなるため傷の痛みも強くなります。手術が決まったらすぐに禁煙をして下さい。喫煙を続けますと手術の後の感染率が高くなるという報告があります。 風邪をひいて高熱が出たときなど、手術が延期や中止になる場合もあります。

小児の麻酔

食事や水分の制限をすると、夜中や朝に「お腹がすいた」、「のどが渇いた」と訴えることが多いですが、安全な麻酔のために指示を守って我慢してもらって下さい。

5.手術室への移動

手術室に移動する前に、指示されたお薬を飲んだり、注射を受けたりすることがあります。このとき、少し眠気やフラフラ感をおぼえることがありますので、1人で行動することは控えて下さい。

6.手術室の中

手術室に入室後、本人確認をします。続いて、図にあるように心電図、血圧計、パルスオキシメーター、脳波モニターなどの麻酔に必要な装置(モニター)をつけ、点滴をします。手術中は当然モニターは必要ですが、手術後にも、状態が安定するまで一部のモニター類は継続されることがあります。モニターを付けること自体には痛みは伴いません。
《全身麻酔の場合》



《1.麻酔を始めます》



《2.気管に挿管します》



酸素の通り道を確保するために、口の中に呼吸用の柔らかいチューブやシリコン製の小さいマスクを入れさせていただきます。その際、弱い歯やグラグラしている歯があるときには、非常にまれですが歯が欠けたり抜けたりすることがありますので、手術前にあらかじめお申し出下さい。この操作に入る場合にはすでに眠っていますので、一般的には苦痛はありません。

《3.手術が行われます》

手術中は、麻酔科医が患者様の状態と手術の進行状況をみながら、麻酔の深さ、鎮痛剤の量や人工呼吸の条件を適切に調節して、最適の麻酔状態を保ちます。

小児の麻酔

マスクの装着の後、しっかりと密着させて、深い麻酔に移行します。このとき暴れることがありますが、これは深い麻酔への移行時に脳が一時的に興奮するために起こります。心配する必要はありません。深い麻酔状態になったら、自然に興奮は治まります。その後、保護者の方が付き添われているときには、手術室から退室していただきます。
《硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔の場合》



硬膜外麻酔は、脊椎(背骨)の中にある脊髄のすぐ近くの硬膜外腔という場所に、局所麻酔薬をいれて、手術部位の痛みを無くす、あるいは軽くする麻酔法です。手術をする所に合わせて、背中のどこから麻酔薬をいれるかを決め、カテーテルという細い管をいれます。このカテーテルから麻酔薬をいれて麻酔を行います。



カテーテルをいれるときには、背中をネコのように丸くして下さい。背中に痛み止めを注射しますので、ほとんど痛くありません。
麻酔の効き目を確かめてから、手術が始まります。
硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔でも、ご希望があれば麻酔薬によって眠ることが可能です。また、手術後も、手術のときにいれたカテーテルから局所麻酔薬をいれることができ、痛みを抑えるのに大変有効です。数日間、痛みを抑えるのに用いられたカテーテルは、必要が無くなれば抜きます。
脊髄くも膜下麻酔では、細い針を使って脊髄液が満たされている場所に局所麻酔薬をいれ、脊髄を麻痺させます。この麻酔が効いている間(3 ~ 6 時間)は、感覚が無くなり、足を動かせなくなります。体位や消毒方法、最初の痛み止めの注射は硬膜外麻酔の場合と同じ方法です。麻酔の効き目を確かめてから、手術が始まります。
手術後、まれに頭痛が起こることがあります。数日間、安静にしていれば自然に治まります。

7.手術の終了

全身麻酔では、手術が終了すると同時に、麻酔薬の投与を中止します。目が覚めるまでの時間は、手術の種類や患者さんの状態によって異なります。目が覚める兆候がみられましたら、声をおかけしますので、それが分かったら目を開けたり、手を握ったりして、目が覚めていることを伝えるようにして下さい。なお、口から喉にいれたチューブやマスクを抜いても、しばらくの間は声が出にくいことがありますが徐々に自然回復しますのでご安心下さい。
最後に患者さんの血圧や脈拍、呼吸状態、血液の酸素化に異常がないかどうかを判断します。
病室に帰る時に、ICU(集中治療室)やモニターできる個室などに行く場合もあります。

8.病室に戻る

•全身麻酔では、病室に帰ってからも十分に覚めるまでしばらく時間がかかります。そのため、眠り続けたり、手足を意味もなく動かしたりすることもありますが、心配はいりません。

•硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔では、病室に帰ったときには会話も可能な状態になっています。全身麻酔や鎮静薬(睡眠薬)を併用したときには、完全に覚めるまでに時間がかかることもあります。

•硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔では、病室に帰ってからも下半身がしびれたままであることがありますが、徐々に自然にもとに戻ります。

•手術や麻酔の種類によっては、麻酔から覚めた直後から痛みを感じることがあります。手術後の痛み止めの注射やお薬はあらかじめ準備されていますので、痛みを我慢しないで遠慮なく主治医・麻酔科医や看護師にお伝え下さい。

•最近では、痛みが強くなった時に、患者さん自身で使用できる鎮痛法があります。硬膜外麻酔のカテーテル、または、点滴から痛みを和らげる薬が持続的に入っていて、それでも痛いと感じた時は、さらに自分自身でボタンを押すことで、痛みを軽くすることができます。この方法を自己制御型持続鎮痛法(PCA)といいます。ポンプの構造上、過剰に投与できないようになっておりますが、時々使用中に吐き気をもよおしたり気分不快となることがありますので、その時はお知らせ下さい。

•手術後、とくに全身麻酔後は痰がたまりやすくなり、肺炎や、肺が部分的にしぼんだ状態になる無気肺といった肺の病気を招いてしまうこともあります。防止のために、深呼吸や咳をしっかり行うようにして下さい。痛みのために深呼吸や咳を行いにくいときには、看護師や主治医、麻酔科医にお伝え下さい。痛みを和らげる工夫をして、深呼吸や咳を行いやすいように配慮します。

9.麻酔の合併症

全身麻酔の合併症・偶発症
歯が欠ける、抜ける(非常に稀です。)


•気管にチューブをいれる操作や、麻酔から覚めるときに歯をくいしばることにより、グラグラした歯や義歯が損傷することがあります。
喉の痛みやかすれ声(時々ありますが、たいていは一時的です。)


•声帯は気管にある膜で、声を出すのに使います。気管にチューブをいれるときや、長時間の人工呼吸で、声帯に少し傷がつき、麻酔から覚めたあと、喉の痛みやかすれ声になることがあります。術後に嗄声のある場合、その原因として披裂軟骨脱臼などの可能性があり、時に専門医の診断を必要としますが、頻度は非常に稀です。 さらに稀ですが、この傷がもとで声帯肉芽腫(粘膜が盛り上がる)ができることや、声帯を動かす反回神経が麻痺することがあります。このようなときは声を出しにくい、むせるといった症状があらわれ、回復までに時間がかかることがあります。
肺炎(誤嚥性肺炎)(稀ですが、ご高齢者、緊急の腹部手術等の時は、時々出ることがあります。)


麻酔中や麻酔直後は、胃の内容物が気管内や肺に入り、誤嚥性の肺炎が起きることがあります。そのため、手術前の絶食・絶水の指示は必ず守って下さい。 誤嚥性肺炎を起こしやすいのは、消化管に通過障害のある方や胃に食べ物が貯まっている方、妊婦さん、お腹に大きな腫瘍のある方、外傷を受けたばかりの方などです。

気管支痙攣(喘息発作)、喉頭痙攣(稀であり、予防に努力します。)
•吸入麻酔薬や喉にいれたチューブの刺激、あるいは使用薬剤のアレルギー反応で気管支痙攣(喘息発作)を起こす可能性があります。喘息の持病がある方だけでなく、そういう病歴が無くても発作を起こすことがまれにあります。予防に注意し、万が一起きた場合でも最善の努力で治療にあたります。
アレルギー(稀におこりますが、術前診察でチェックします。)


麻酔や手術の消毒などで使用する薬が体に合わなくて、蕁麻疹があらわれたり、呼吸困難になったりすることがあります。海外のデータでは1万人から2万人に1人の頻度です。万が一起こった場合でも、内科的に治療いたします。

悪性高熱症(極めて稀です。)


麻酔薬により筋肉が硬直したり、高熱が生じたりするといった危険な状態になる遺伝的な異常で、このような遺伝を持っている人は2万人から6万人に1人程度ときわめてまれです。血縁の方に麻酔でこのような異常反応を起こした方がいれば主治医あるいは麻酔科医に必ずお知らせ下さい。

硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔の合併症・偶発症
頭痛(時々ありますが、できるだけ予防、治療します。)


脊髄くも膜下麻酔では硬膜に針をいれますが、手術後に脳脊髄液がこの針穴から漏れ、脳圧が低下し、激しい頭痛が起こることがあります。発生頻度は約0.5%(170~200人に1人)程度で、特別な治療をしなくても1週間程度で治まります。予防法は、病室に帰った後、なるべく安静にして、急に頭を動かさないことや、許可が出たら水分を十分にとることです。

馬尾症候群・一過性神経症状(神経根刺激)(ごく稀です。)
•脊髄は腰椎上部までで、それより下の脊柱の中は馬尾といい、細い神経が縦に走っています。脊髄くも膜下麻酔は馬尾の部分に局所麻酔薬をいれるので、通常、太い脊髄は傷害を受けません。しかし、1万人から5万人に1人程度の頻度で、腰髄下部以下の神経支配領域の知覚異常、運動障害、膀胱直腸障害など(馬尾症候群)を生じることがあります。脊髄くも膜下麻酔の効果が切れてから臀部、下肢に激痛が生じる一過性神経症状もまれに報告されています。
硬膜外血腫、硬膜外膿瘍・脊髄くも膜下血腫、脊髄くも膜下膿瘍(非常に稀ですし、起こらないように予防、注意します。)
•血液を固める機能や血小板に異常がある場合、硬膜外麻酔で、背中に針を刺すときやカテーテルを抜くときに、硬膜の外に血腫(血のかたまり)ができて、神経を圧迫することがあります。10万から15万人に1人の頻度で起こります。硬膜外膿瘍は、カテーテルを介して細菌が硬膜外腔に侵入し、発生する膿のかたまりです。血腫と同様に、神経を圧迫して感覚や運動を麻痺させることがあります。 また、脊髄くも膜下麻酔でも、脊髄くも膜下血腫や脊髄くも膜下膿瘍ができることがあります。
排尿困難(割とありますが、一時的です。)


硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔の効果が切れてしばらくの間、尿意を感じても尿が出ず、尿道に管を入れて尿を排泄させなければならないことがあります。通常は1〜2回の処置で自然に治ります。

吐き気、嘔吐、かゆみ、足のしびれ(時々あります。注意して、対応します。)
•痛み止めの薬がこのような症状を起こす可能性があります。症状が強くて我慢できないときは、看護師や主治医にお知らせ下さい。
硬膜外カテーテル切断(非常に稀です。)
•まれにカテーテルが切れて体内に残ることがあります。手術的に遺残カテーテルの摘出を試みる場合があります。
麻酔が効かない、麻酔が切れてきた(稀です。注意して対応します。)
•手術に必要な範囲まで麻酔が効いていないために痛みが強くて我慢できない、あるいは手術が予定より長引いて麻酔効果が消えることがあります。この場合は全身麻酔に変更になることもあります。

《元の病気の悪化や高齢者の方の合併症》

脳内出血、くも膜下出血(非常に稀です。注意して対応します。)
脳内出血、くも膜下出血、高血圧の病歴のある方では、危険性が高くなります。
脳梗塞(稀です。注意して対応します。)
1300~270人に1人(0.08〜0.37%)の発生率が報告されています。不整脈や脳梗塞の病歴のある方では危険性が高くなります。
心筋梗塞(稀です。術前スクリーニングを行い、注意して対応します。)
1.8~3.0%程度の発生率が報告されています。心筋梗塞を起こして死に至る頻度は21%、一度心筋梗塞を起こしている人で再梗塞を起こす頻度は7.7%、特に心筋梗塞を起こして3ヵ月以内の手術の場合の発生頻度は17~35%前後と報告されています。
多量の血栓(血のかたまり)などが肺の血管に詰まると呼吸困難、胸痛、ときに心肺停止を引き起こすことがあります。これが肺塞栓症で、一旦発症すると死亡率が10〜30%を超える危険な病気です。「エコノミークラス症候群」と同じものです。発生頻度としては0.008〜0.04%程度ですが、これが原因で死亡する頻度は17%(6人に1人)と報告されています。肺塞栓症が起こる主な原因は、下肢血流の停滞(血の流れがゆっくりになること)によって、足の太い静脈にできる血栓(深部静脈血栓)によります。長期間寝たきりの状態、および一時的に動けない状態(手術時)では、膝から足首までの筋肉のポンプ作用が弱っているか、機能が完全に停止していることがあるために血液が固まりやすくなり、この病気が発生しやすくなります。手術後の深部静脈血栓の発生頻度としては 10.8〜31.3%と報告されています。深部静脈血栓が肺塞栓症の原因であった割合は報告により異なりますが10〜70%といわれています。このため、手術中の肺塞栓症を防止する様々な予防法が考案され、実際に使用されています。
肺塞栓症(稀です。注意して治療します。)

【肺塞栓症が発生しやすい方】

  1. 比較的高齢の方
  2. 肥満の方
  3. 妊娠している方、出産経験のある方
  4. 女性でピル(経口避妊薬)を内服している方
  5. 先天的に、または薬物などで血液が固まりやすくなっている方
  6. 心疾患、悪性腫瘍、脳卒中、下肢の浮腫・うっ血・潰瘍などの病歴のある方
  7. 喫煙者
  8. 長期間寝たきりの方

【肺塞栓症が発生しやすい状況】
  1. 特殊な手術:腹腔鏡下手術、下腹部手術(骨盤内操作)、多発骨折
  2. 特殊な手術中の体位:砕石位、腹臥位
  3. 長時間の手術

【肺塞栓症の予防処置】
  1. 弾性ストッキングの着用
  2. 器械による下腿のマッサージ

『合併症に対して・・・』

合併症は、術前診察の際、十分にお話を伺い、検査や診察の結果をふまえて細心の注意を払って麻酔することで予防できると考えております。しかし、麻酔も医療行為である以上、100%安全な麻酔は存在しませんが、私たち麻酔科医は常に安全第一な麻酔を目指し、日々研鑽し、努力しておりますので、何かご不明な点がございましたら遠慮なくご相談ください。

※上記は日本麻酔科学会ホームページより抜粋、引用させて頂いております。

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